2026/06/17 17:25
れんこん農家になるまで⑤〜修行時代①「伝説の二日間」〜
私が師匠のもとに弟子入りした初日のことは、今でも忘れられません。
まず驚いたのは、職場に日本人が一人もいなかったことです。師匠の家族以外は、全員が中国人の方。近隔のれんこん農家で働いていたのも、中国、モンゴル、カンボジアから出稼ぎに来た方々ばかりで、私は完全に浮いた存在でした。
そんな中、五月——れんこんの植え付けで一年で最も忙しく、誤もがピリピリしている時期に、私の修行は始まりました。
『初日、軽トラを田んぼに落とす』
当時の私はマニュアル車に乗っていて、運転には自信がありました。「軽トラのマニュアルなんて楽勝だろう」と。
その舐めていた僕はすぐに出鼻をくじかれました。
れんこんの田んぼのあぜ道というのは、想像する絶する狭さです。幅は軽トラ一台分ギリギリ。ハンドルをタイヤ半分ずらしただけで田んぼに転落する、そんなぬかるんだ泥のすれすれの道。しかも荷台にはれんこんや機械など重い物を積んでいるので、タイヤが沈む中をハンドルを持っていかれないようにしながらゆっくりと慎重に進まなければいけません。
私は最初の移動の時にバックであぜ道に入ろうとした瞬間に脱輪して田んぼに落ちました。
植え付け最盛期の殺気立った空気の中でです。師匠の顔は真っ赤。今では問題になるような激しいご指導をいただき、「もう余計なことはするな」と言われ、当たり障りのない作業だけを命じられました。
初日の記憶は、それしかありません。それ以外に何をしたか、まったく覚えていないのです。
『二日目、管理機を田んぼに沈める』
そんな凹んだ気持ちのまま迎えた二日目。今日は「代かきをしておけ」と指示を受けました。
れんこん田の代かきは重すぎて沈むのでお米のようにトラクターのように大きな機械では行いません。管理機を改造した、小回りの利くミニトラクターのような機械を使います。
ただ、私はその管理機を使ったことがありません。全く分からないまま、ただやみくもにぐるぐる運転していました。
その田んぼは比較的深く、雨上がりで水がひたひた。エンジンの排気口すれすれの水位でした。田んぼの形状も分かっていなかった私は管理機を、田んぼに沈めました。
昨日は軽トラを沈め今日は管理機を沈めました。「また怒られる。嫌だなあ」と思いながら報告に行くと、案の定、雷が落ちました。
「二日間で軽トラと機械を沈めたやつは、今までお前が初めてだ」
ありがたいお褒め言葉をいただきました。
二日間でとてつもないことをやらかした私は、「自分には本当に才能がないんだな、何にも出来ないんだな、本当に一人前になれるのかな」と、心の底から焦っていました。
自分のおじいちゃんや周りの農家が使っている機械や作業はパッと見は簡単そうに見えますが、いざ自分がやるとこんなに難しいとは💦
まだまだ続く!